科学研究費補助金 基盤研究(B) 〈近世における前期国学の総合的研究〉研究課題番号:22320130 | |||||||
挨拶 国学という言葉は、現代ではあまり関心を持たれないようです。ただ日本文化を考える上で、大きなキーポイントになることは確かでしょう。国学というと、賀茂真淵・本居宣長・平田篤胤の名はよく出ますが、国学の四大人の筆頭に位置する荷田春満(1669−1736)の名や業績はそれほど知られていません。しかし彼が活躍した17世紀後期から18世紀前期の「前期国学」は、国学の揺籃期の問題だけではなく、近世学問の確立や社会の展開を考える上でも重要ですし、彼はそこに大きな足跡を残しました。 荷田春満が、京都伏見稲荷社の社家の出身で、古典研究や和歌を通じて古来の日本文化や神道の究明を志していたことはすでに知られていました。ただ、彼はそれだけではなく、「唐ハ聖人ノ国、日本ハ神ノ国ト云ハ、却ッテ小サキ了簡」と主張して、和漢の知識を総合しながら日本文化を研究するという学問体系を構想し、八代将軍徳川吉宗の文教政策に協力して古書や漢籍の調査蒐集に当たり、律令の研究を命じられ、幕府儒者林鳳岡が判らなかった漢籍を解き明かして吉宗に報告するなどの業績をもち、歴史的に武家政権を批判する思想をもっていました。一方で、和歌・歴史・律令を研究・教育する「倭学校」の設立を構想していました。春満は、本居宣長以降とは異なり、和漢の総合的な学問の中で、日本の歴史・文化・伝統を追求しようとした「総合的人文学」ともいうべき学問を目指していました。本研究の目的は、春満の学問の検証・解析を進めることによって、わが国における総合的人文学の萌芽を17世紀後期から18世紀前期の近世前期国学の中に探求しようとするものです。 私たちは、國學院大學創立120周年記念事業として編纂された『新編荷田春満全集』全12巻(おうふう刊)に関わる中で、春満の生家である東羽倉家の史料を、京都市の東丸神社のご厚意で閲覧を許され、編集作業とは別に、平成15年度から科学研究費補助を受けて「近世国学の展開と荷田春満の史料的研究」(課題番号15320086)に取り組み、東羽倉家文書の整理と調査を行いました。その後平成19年度・20年度と國學院大學特別推進研究補助、21年度には國學院大學文学部共同研究費補助を受けながら調査・研究を続け、平成22年度から科学研究費補助を受けて「近世における前期国学の総合的研究」(課題番号22320130)を推進し、研究会と調査を続けています。 このホームページ では、荷田春満に代表される「前期国学」が、近世学問の形成に果した役割や位置づけのみならず、近世の文化や社会・政治にも大きな影響を与えていたことを、学際的・総合的に検討を加えて明らかにするとともに、重要な史料を順次公開し、今後の研究の発展に寄与したいと考えています。 最後に、東羽倉家文書を所蔵される東丸神社の松村準二宮司ご夫妻はじめ、さまざまな方々のご協力とご支援に深謝申し上げます。
科学研究費補助金 基盤研究(B)「近世における前期国学の総合的研究」
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