研究成果

口頭発表

國學院大學國文学會平成十六年度秋季大会
                   (平成16年11月21日)発表

 

荷田春満の『仮名日本紀』の特徴
      ―東丸神社所蔵本の検討を通して

渡邊卓(國學院大學・大学院)

 

荷田春満は、後世「国学の祖」とも呼ばれ、「国学の四大人」とも位置付けられる人物である。これまで春満の『日本書紀』研究は神代巻が中心であるとされてきた。だが、一世紀ぶりに行われた國學院大學の東羽倉家の史料調査・整理によって、複数巻の春満の『仮名日本紀』の存在が明らかとなり、神代巻以外の春満の学説を研究することが可能となった。春満の『仮名日本紀』は、春満の訓読に対する解釈が如実に現れているものであり、春満の自説が含まれていることは間違いない。

よって東羽倉家所蔵の複数の『仮名日本紀』を比較することで、その特徴を明らかにすることができよう。なかでも、東羽倉家所蔵の『仮名日本紀』巻六は、春満自筆本、片仮名自筆本、春満著述親盛本が確認されている。発表に際する事前調査において、自筆漢字仮名交じりの仮名日本紀が、三手文庫本の書写本であるということが明らかになったが、それらの比較により、片仮名本と親盛本とにみられる春満の訓読傾向、並びにそれぞれの本の特徴が浮かび上がる。死に関する表現や「天皇」の訓読の仕方などに、それは顕著であった。そのような春満の自説を多分に含む仮名日本記が、およそ享保年間において弟子達の間で頻繁に書写されていたのである。

 

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